毎日の習慣になっている「お風呂」。
普段は、特に考えることなく、何気なくいつも通りに入浴されている方がほとんどだと思いますが、本当は、ちょっと気を付けるだけで、入浴本来の効能を少しでも高めることができるのです。
そこで、今回は、入浴に関する「基本中のき」をおさらいしてみましょう。
■お風呂は、いつ入るのが良いの?
ライフスタイルの多様化により、現代人の入浴する時間帯は、実に様々です。
朝や夜中に入浴している人もいるほどです。
ただ、体の生理的メカニズムでは、夜の8時を過ぎると、次第に内臓は休息を取りたいと思い始め、夜10時を過ぎると完全に「お休みモード」になると言われています。
そう考えると、夜10時以降は入浴は控えた方が良いということになります。
特に、夜11時以降に毎日入浴していると、体のどこかに違和感や不調を感じやすくなるようです。
一方、朝の入浴にも問題があります。
朝方は一日の中で一番気温が低く、体温も低いので、体の冷たさや寒さを解消するために、よく朝風呂をする人がいますが、これは、心臓に負担をかけることになります。
また、暑い夏ならともかく、特にこれからのような寒い時期には、入浴後出勤などで外出すると、たちまち湯冷めをして、体を冷やしてしまいます。
気温が高い夏に、寝汗をかいて朝起きた時にさっぱりしたいという時は、ぬるめのお湯に短めに入るか、シャワー程度にしておくのが賢明でしょう。
また、よく、冷え症で体が冷たいから、寝る前にお風呂に入る方がいますが、お風呂から出た直後は、体が温まっていて興奮状態にあるので、すぐには寝つけません。
できれば、少なくとも寝床に入る30分~1時間前に入浴をすませておきたいものです。
■ヒートショックに気をつけよう!
寒い季節には、脱衣所や浴室は冷え切っている場合が多いので、急激な温度変化による血圧の急変動などが身体に悪影響を及ぼすこと、いわゆるヒートショックに注意しなければなりません。
あらかじめ浴槽のフタを開けておいたり、シャワーを出しておいたりして、浴室内を温めておくことをおすすめします。
そこで、ヒートショックを起こさないためのお手軽な習慣を紹介します。
・湯船に浸かる前に、必ず掛け湯をする
冬場は特に、体が冷えているため、いきなり湯船に入るのは危険です。急激に血管が収縮して、血圧が上昇して、脳卒中を引き起こしかねないからです。
必ず掛け湯をして、皮膚表面を温めて、湯温を体に慣れさせてから湯船に浸かるようにしましょう。
掛け湯は、足先から膝、太もも、手先から腕、お腹、心臓へと、下から順に行いましょう。
そして、湯船に入る時は、足先からゆっくり入りましょう。
・湯船に浸かったら、深呼吸する
冷え症気味の方は、湯船に浸ったら、深呼吸をしてみると良いでしょう。
深呼吸は、血管を拡張し、血の巡りを良くする効果があります。
鼻から深く、おなかの上の手が持ち上がるくらい息を吸い込む→口笛を吹くようなすぼめた口から息を吐く→おなかの上の手でおなかが引っ込むのを感じながら、息を完全に吐き出す。
これをゆっくりしたペースで、3~10回繰り返します。
体全体を温めながら、自然に心が落ち着き、リラックスしてきます。
体を洗う時も、心臓から遠いところから洗うと良いでしょう。すなわち、足、手、身体(胴体)という順です。頭髪は、体の調子が良くない時は、無理に洗わない方が無難です。
・浴室で、軽めのストレッチやマッサージを行う
入浴中に、または湯船から出たら、体がぽかぽかしているうちに、足先から徐々に揉みほぐしましょう。
足裏にあるツボを刺激すると、血流が良くなり、入浴後も温かさが持続します。
特に、手先や足先の末端冷え症の人は、手と足の指を1本1本もみほぐすように、マッサージしましょう。
足の指の付け根には、自律神経の通り道があり、ここに刺激を与えることで自律神経を活性化させ、血液の流れが良くなります。
■お湯の温度はどれくらいが良いの?
健康に良いお風呂のお湯の温度は、38度~40度と言われます。
全身浴なら10~15分程度、半身浴なら20~30分程度入浴するのが理想的です。心身の緊張をほぐし、リラックスできてちょうど良いのです。
ぬるめのお湯は体にもやさしく、副交感神経が働いて血管を拡げます。それによって、血液の循環が良くなって、体が内側から温まるのです。
日本人は、昔から熱いお風呂が好きで、お湯の温度は熱い方が温まると思いがちですが、42度以上の熱いお湯は交感神経を刺激して血管が収縮し、体の表面しか温まりません。
お湯が熱いと、お湯に長時間浸かっていることができません。
本来はじっくりと長めに入浴して、体の芯まで温めないと、お風呂から出た後にすぐに湯冷めしてしまいます。
だから、熱いお湯は、健康には逆効果なのです。
また、冷えきった体で一気に熱い温度のお湯に浸かると、心臓や他の内臓に負担がかかって、突然死の危険性も高まります。
実際、42度という熱めのお風呂に入ると、血圧が一気に約50位上昇して、お湯から上がると、今度は一気に急降下します。
この急激な変化に心臓や脳がついていけず、突然死に至ることがあるのです。
40度以下なら、血圧は10~20くらいの上昇で済みます。
特に、高齢者は要注意です。もともと加齢により、温度に対する感受性は下がってきます。同じ熱さの風呂に浸かっても、年をとると熱く感じなくなります。これが危険なのです。
熱く感じないのに、身体の内部は交感神経系が非常に興奮して、血圧が急に上がり、新陳代謝が活発になります。
その結果、不整脈が出たり、いろいろな悪影響が出てきます。だから、42度以上の高温浴は避けるべきなのです。
熱い風呂に全身浴で浸かっていると、次第に慣れてきますが、立ち上がったとたん急に血流が下半身の方に下がって、脳貧血を起こしてしまいがちです。
脱衣室が寒いと、再び血圧がうんと上がります。
お風呂で亡くなる人の数は、42度以上で急に増加します。特に、11月~12月、1月~2月の寒い冬季に多くなります。
65歳以上は、交通事故よりもお風呂で亡くなる方が多いほどです。くれぐれも気をつけましょう。