漢方で、体の不調を改善しよう

自然治癒力を高める「漢方」とは?

「漢方」と聞くと、皆さんは何をイメージしますか?古来より薬草を煎じてこしらえた漢方薬とか、鍼、灸、指圧などを含めた伝統的な東洋医学をイメージされると思います。

今回は、いわゆる「漢方薬」とその効能などについて、紹介したいと思います。

漢方は、体の表面に表れている症状だけでなく、その奥にある原因まで探り、人に本来備わっている自然治癒力を高めることで、不調を改善します。

冷え症に対しても、漢方を利用して体質改善をすることで、体の中から温めることができるようになれば、抜本的な改善につながります。

そして、単に冷え症や貧血を改善するだけでなく、冷え症や貧血によって起こる様々な体の不調を改善する効果も期待できます。

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■冷え症・貧血に効く漢方薬とは?

漢方では、体質やその時々の状況を「気・血(けつ)・水(すい)」という「体を構成する要素」でとらえます。

貧血は、「血」が不足した「血虚(けっきょ)」と呼ぶ状態と考え、貧血に伴う動悸、息切れ、倦怠感、肩凝り、イライラなどの症状や体質などを考慮して、その人に合った薬が処方されます。

冷え症・貧血改善に効果がある主な薬を紹介します。

 ・当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)

体を温めて、血行を良くする働きがあります。

体力が標準より弱く、貧血、冷え症、低血圧、月経異常、下腹部痛、めまい、立ちくらみ、肩凝り、耳鳴り、動悸、更年期障害、頭重感、腰痛、足腰の冷え、むくみ、疲労倦怠がある場合に向いています。

六君子湯(りっくんしとう)

体力が標準より弱く、貧血ぎみで手足が冷えやすい、胃腸の働きが弱く食欲がない、消化不良、みぞおちがつかえる、嘔吐などがある、疲れやすいなどの場合に向いています。

十全大補湯(じゅうぜんだいほとう)

体力が標準より弱く、貧血、疲労倦怠、食欲不振、手足の冷え、寝汗、病後・術後の体力低下などがある場合に向いています。

・人参養栄湯(にんじんえいようとう)

胃腸に直接働きかけて、体を元気にする漢方薬です。

体力が虚弱で手足が冷えやすい、貧血、疲労倦怠、食欲不振、胃腸の消化力の低下、寝汗、病後・術後の体力低下などがある場合に向いています。

・加味帰脾湯(かみきひとう)

血の巡りを良くすることで、冷え症を改善します。

体力が虚弱で、疲れやすい、顔の血色が悪い人の貧血、動悸、不眠、倦怠感、イライラする、感情の起伏が激しい、気持ちが不安定で精神不安などがある場合に向いています。

専門の漢方薬局や漢方医に相談しよう

漢方薬の効果を最大限に発揮するには、自分の体質や症状に合ったものを選ぶ必要があります。

自分の体質や症状に応じて、専門の漢方薬漢方医に相談しながら、冷え症や貧血のタイプや重症度に合わせて、自分に合った漢方を処方してもらいましょう。

 漢方薬で、冷え症・頭痛を改善する

私たちの体調不良の中には、症状のみで病名が付けられない病気の一歩手前の状態が存在します。

それを「未病」と呼び、西洋医学では対応しにくい事が多々ありますが、冷え症もこの未病の一つで、そんな未病にも効果的なのが漢方医学です。

漢方にとって、冷えの症状はとても重要な項目なので、冷え症対策として、漢方医学の力を借りることも大変有効です。

市販の漢方薬の中から、冷え症に良いとされるものを選んで、規定通りに服用したり、漢方薬を処方してもらえる病院を受診し、自分に合ったものを処方してもらうと良いでしょう。

 症状別で見る冷え症と漢方

 冷え症は、冷えだけではなく、頭痛・めまい・肩凝り・月経困難・便秘症などの様々な症状を伴います。

いずれの場合も、まず冷え症を改善するために、血行を改善して、血液を増やすことが大事になります。

今回は、冷え症に効果的な漢方薬を症状や体質別に分けて紹介します。

漢方から見た頭痛のメカニズム

頭痛は、何らかの原因によって、体の中の巡りが邪魔され、上部()への「」や「血(けつ)」の流れが乱れてしまった状態です。

その原因が「冷え症」である場合は、頭痛が生じるだけでなく、胃腸の働きも弱り、吐き気や嘔吐なども生じます。

「冷え」は「気」や「血(けつ)」の通路へ入ってきますが、冷えが入りやすい道筋が、足の内側や、体の側面、側頭部などにあるため、手足や指先の冷えが生じ、またこめかみなどが痛む頭痛が起こるのです。

■冷え症・頭痛や吐き気に効く漢方薬

漢方では、「」を補い、胃腸を温め、働きを高めることで、滞った「気」を巡らせ、頭痛を改善し、同時に吐き気、肩凝り、こわばりも治していきます。

そのための代表的な漢方薬を紹介します。

・呉茱萸湯(ごしゅゆとう)

一般的に、冷え症とともに偏頭痛や緊張型頭痛も併発している人に処方され、肩やうなじ周りの凝り解消にも使われている漢方薬です。

体の中心であるお腹を温め、「気」や「血(けつ)」の流れを乱していた「冷え」を取り除くことで、吐き気を伴うほど激しい頭痛を鎮めます。

胃腸の働きを整え、吐き気を鎮める働きもあるため、胃腸が弱い方の頭痛薬としても適しています。

そのため、嘔吐・悪心などの消化器症状がある場合でも服用しやすくなっています。

ズキズキする頭痛、頭痛からくる吐き気で悩む方におすすめの漢方薬です。

 ・当帰四逆加呉茱萸生姜湯(トウキシギャクカゴシュユショウキョウトウ)

四逆」の「」とは四肢、「」とは「逆冷」のことで、体の末端から冷えが上がっていくことを意味し、冬場の外出時の足先の冷えなどから始まり、次第に慢性的な手足の冷えに発展し、頭痛、吐き気、めまい、腰痛、坐骨神経痛なども引き起こします。

当帰」が血行を改善し、「茱萸」「生姜」が体を中から温めます。

 「呉茱萸」には胃腸を丈夫にする効果が、「生姜」には体の中の水の巡りを良くし、吐き気などを止める作用もあります。

冷え症改善の代表的な漢方薬で、慢性化してしまった冷えにも効果があります。

末端から冷えてくる末端冷え症の人に特におすすめで、ひどくなった冷え症でも効果を発揮してくれます。

■漢方から見た、肩凝りのメカニズム

漢方では、肩凝りを「気」と「血(けつ)」の巡りが滞っている状態と考えます。

ところが、この状態が何度も繰り返されると、「血(けつ)」の巡りも滞ってしまい、そうなると、動かすだけでは改善されなくなり、慢性的に痛むようになります。

また、巡りが悪くなると、徐々に「気」と「血(けつ)」が不足し、湿気や冷えが入りやすくなって肩を冷やします。

肩が冷えると、ますます「気」「血(けつ)」の巡りが滞り、痛むようになる、悪循環をもたらすようになってしまうのです。

■冷え症・肩凝りに効く漢方薬

西洋医学では、「血行不良」を改善させるためのビタミン類や、痛みを止める鎮痛薬などが使われます。

一方、漢方では、「気」と「血(けつ)」の巡りを良くすることで、凝りをほぐしていきます。

また、湿気を取り除いたり、冷えた部分を温めたりして肩凝りを改善します。

独活葛根湯(どっかつかっこんとう)

「独活葛根湯(どっかつかっこんとう)」は、「葛根湯」をベースに「独活(どくかつ)」と「地黄(じおう)」を加えた処方です。

熱を作る力を助けて体を温め、風邪や肩凝りを治していく「葛根湯」に、痛みを止める生薬や、「気」「血(けつ)」の不足を補う生薬をプラスしたことで、より肩凝りへの効果を強めた処方にしています。

慢性的な肩凝りに向いています。

 

 

いかがですか。

冷え症や貧血、低血圧も、改善するには、共通して基本的な生活習慣の改善がまず大切です。

もし、様々な冷え症対策をしても、なかなか改善されない場合は、一度、冷え症や貧血の専門医を受診して、徹底的に原因を究明されることをおすすめします。

単に冷え症や貧血だと思っていたのが、実はその背景に大変な病気が潜んでいたということもあり得るからです。