お灸が、どのようなものなのかが大体理解出来たら、具体的にどんな点に注意してお灸を行なったら良いのか、お灸をする「ツボ」はどこにあるのか、などについて、今回はお伝えします。
■お灸をするのは、いつがよいのか?
お灸は、血行を良くすることがひとつの目的なので、すでに血行が良くなっているお風呂上がりにやっても、あまり意味がありません。
また、食事の前後、飲酒後、妊娠の可能性がある時、熱がある時、疲れや寝不足がひどい時は、避けた方が良いでしょう。
できれば、寝る前、もしくはリラックスできる時間に、ゆったりとした気持ちで行うのが効果的です。
・どのくらいやれば、よいのか?
最初は、一ヵ所のツボに1~2個位から始めましょう。
いきなり多くお灸をすると、「灸あたり」と言って、のぼせたような感じになることもありますから、要注意です。
体がお灸に慣れてきたら、少しずつ増やして、3~4個位にしましょう。その場合、同じツボでも少し場所をずらすと、低温やけどになりにくいです。
最初のうちは、熱さの加減もよく分からないかも知れませんが、熱すぎる!と感じたら、一旦止めましょう。
お灸は、熱ければ効果が高い、というものではありません。熱さを我慢していると、体が緊張してストレスが溜ってしまい、かえって良くありません。
また、軽いやけどをしてしまうこともあります。熱かった所を掻いたり、擦ったりしないように気をつけましょう。
専門家が治療行為としてお灸をする場合と違って、自分では体調の判断もできないことがあります。
急に血行が良くなると、だるい、熱っぽい、頭痛などを感じることもあるかも知れません。
これは、先述のとおり「灸あたり」といって、温泉に入り過ぎた時のような「湯あたり」と同じ症状です。
そんな時は、一旦休んで、体が元気になってから再開しましょう。
■お灸のツボの場所は?
体には、無数のツボがあり、正式にはこれを「経穴(けいけつ)」と呼びます。
経絡(けいらく)とセットで考えます。経絡とは、体中を巡っている無数のエネルギーの通り道で、「氣(生命活動の元)」、「血(血液。全身に酸素と栄養を送る)」、「水(リンパ液など血液以外の体液)」を全身に巡らせていきます。
その通り道の主要なポイントが経穴です。経穴には、気が集まりやすいので、ここを温めることによって気の流れを整えて、内臓を刺激する、痛みを和らげる、疲労回復などの健康効果が得られます。
ツボは、いわば「エネルギーの通り道」ですので、ツボを刺激すれば、血液などの体液の循環が良くなることが知られています。
ツボの場所は、人によって様々ですが、大体の場所を押してみて、「気持ちいい所」や「ちょっと痛い所」を探してみましょう。
■冷え症に効くお灸のツボの場所とは?
体にある様々なツボは、ツボによって「どのような症状に効果的なのか」が異なります。
例えば、冷えに効くツボはいくつもあります。実際の鍼灸治療では、その人に合ったツボを複数選んで使用します。
多くの人が悩んでいる血行不良を改善するツボ、水分代謝から冷えを改善するツボ、栄養の吸収を良くして、代謝を上げて体を温めるツボなど、様々です。
そこで、「冷え性」改善に効果的なお灸のツボを、いくつか紹介します。
・「太衝(たいしょう)」
太衝は、足の甲の親指と人差し指の骨が接合する所にあるツボです。
押さえるとズンと響く場所です。このツボは、血流を良くして、冷えを改善します。
また、肝臓、筋肉、眼といった私達が日頃酷使している体の部分と深い関係のある「肝経(かんけい)」という氣の流れに属しているため、肉体疲労、精神的ストレス、眼精疲労、肝臓の疲れを取る効果もあります。
・「三陰交(さんいんこう)」
足の内くるぶしから指4本分上で、骨の際にあるツボです。
冷え症の人は、押さえるとかなり痛いはずです。
三陰交は、3つの機能(消化吸収・水分代謝・生理機能)に関わる三つの経絡が交わるポイントです。
そのため、三陰交にお灸をすると、3つの機能を同時に高めることができます。
下半身の冷え、むくみが気になる時だけでなく、生理痛・生理不順・更年期障害・ホルモンバランスの調整などにも効果が期待できると言われており、女性にとっては大切なツボです。
・「足三里(あしさんり)」
足三里は、膝下の外側を指で辿って行って、くぼんだ所にあるツボです。
分かりにくい場合は、親指と人差し指で膝のお皿を包むように触った時、中指の先端が当たる所が足三里のツボだと考えると良いでしょう。
このツボは、冷えに効くだけでなく、肩凝りや胃の疲れにも効きます。
足三里にお灸をすると、胃の調子を整えて、食べた物からエネルギーを吸収できるようになります。
・「血海(けっかい)」
血海は、膝のお皿から指3本分上の内腿にあるツボです。
このツボも、押すと、鈍い痛みがあります。
血海は、滞った血液を流す作用が強いので、冷えに効くだけではなく、生理痛や月経不順、さらには子宮内膜症や子宮筋腫などにも効果があると言われるツボです。
・「太渓(たいけい)」
太渓は、内くるぶしとアキレス腱の間のくぼみにあるツボです。
腎臓に働きかけるツボなので、血の巡りが良くなり、体を温める効果が期待できます。
特に、冬の間に蓄積された冷えに効果があると考えられています。
また、アンチエイジングにも良いと言われています。
・「湧泉(ゆうせん)」
湧泉は、足裏の土踏まずのやや上の中央部、人差し指と中指の骨の間で少しくぼんだところにあるツボです。
下半身の冷えやむくみの改善に効果があるほか、筋肉疲労の回復、気力の充実や体温の上昇などをはかるのによく効きます。
足が冷えたり、むくんだり、疲れてしまった時は、湧泉を温めて元気を出しましょう。
・「気海(きかい)」
気海は、おへそより指2本分下にあるツボです。
「元気の源」ともいえるツボで、全身の血行を促し、体を温める効果があります。
季節を問わず、気海を温めることでコンディションが安定し、元気に過ごすことができます。
・「築賓(ちくひん)」
築賓は、ふくらはぎの内側の脛骨(すね)の中間あたりにあるツボです。
このツボは、腰から来る神経の緊張をほぐすため、下半身全体の血流が改善すると考えられています。
足の血流を改善させることで、全身の血流も改善するため、手の冷えにも効果があります。
・「八風(はっぷう)」
八風は、左右の足の指の間の股の部分のツボです。
足先の血流を増加し、冷えを改善する効果があります。
足が冷えて眠れない時にも、八風を刺激すれば、足が温まり、ぐっすりと眠れます。
・「中脘(ちゅうかん)」
中脘は、みぞおちとおへそを結んだ線の中央、おへそから指5本分くらいのところにあるツボです。
胃腸の働きを整えるとともに、気血の巡りを促すので、冷えに効果があります。
・関元(かんげん)
関元は、おへそから指4本分下がったところにあるツボです。
便秘の解消や疲労、冷え症などに対応し、お腹を温めてくれます。
別名「丹田」とも呼ばれて、昔から元気の源とされています。
免疫力を高めて、虚弱体質を改善し、病を寄せ付けにくい身体にする効果があると言われています。
スポーツでも、ここを意識することで、カラダが安定するので、とっても重要視されていますね。
■冷え症を治してくれる鍼灸院を探そう
いかがでしたか。お灸は、冷え症改善の抜本的対策の有効な手段として、いかに身近ながら奥深いか、改めて見直された方も少なくはないと思います。
お灸で、「冷え症」を改善する体のツボなどは分ったけど、やっぱり自分でやるのは面倒だとか、本来、お灸は医療行為だから、初めて自分でお灸をやるのは不安だ、といった場合は、専門の鍼灸院を利用するのが安心です。
その際、できるだけ信頼できる鍼灸院を選ぶために、良い鍼灸院の選び方のポイントをお教えしましょう。
最近は、ホームページを開設している鍼灸院も多いので、簡単に調べられると思います。
・施術者は資格を持っているか?
鍼灸師は、医者ではありませんが、国家資格を必要とする仕事です。
鍼灸の施術には、「はり師」「きゆう師」の資格を取らなければなりません。
専門の養成学校で学んだ後に、国家試験に合格する必要があります。まず、資格の有無が絶対条件です。
そのうえで、どのような施設で施術をするのか、どのような流れでカウンセリングや施術を行うのか、その治療方針やポリシーなどもしっかりチェックして、事前に患者の疑問が解消できるようになっていれば、大丈夫でしょう。
・「冷え症」が得意分野か
東洋医学は、ピンポイントでその症状にアプローチするというよりは、体全体を見ていくのが特徴なので、また、資格保有者であれば、ひと通りのことを学んでいるので、どのような症状でも大抵は対応できるはずですが、やはり誰にでも「得意分野」があります。
自分が改善したい症状、例えば「冷え症」を得意としているかというのも大事なポイントです。
自分の症状がその鍼灸院で対応できるものなのか、事前に聞いてみても良いでしょう。