体を芯から温めて、血行を良くする働きのある「お灸」は、冷え症を始め、体の様々な不調を改善するのに極めて効果的です。
お灸というと、お年寄りが腰痛や神経痛の改善などのために行うというイメージが強いかも知れませんが、実は、若い女性にも嬉しい効果がたくさんあります。
また、今では、鍼灸院などに行かなくても、自宅で簡単にお灸をすることもできます。
そこで、今回は、お灸の正しいやり方と場所(ツボ)などについて、お伝えします。
■東洋医学で発展してきた「お灸」
お灸は、中国が発祥で、紀元前から東洋医学の一つとして発展してきました。単なる健康法ではなく、立派な医療の一つなのです。
お灸が日本に入ってきたのは飛鳥時代、仏教伝来の頃と伝えられています。
江戸時代には、東洋医学全盛となり、お灸も日本から世界に広まっていきました。
明治時代になって西洋医学が主流になるまで、お灸は日本の「医療」として、日本人の健康を支えてきたのです。
海外では、お灸は「Moxa(もぐさ)」として知られています。
もぐさとは、「燃え草」という意味があり、点火しやすく火が消えにくいという特徴があるので、お灸には最適な原料です。
お灸で使うもぐさの原料は、よもぎです。日本では、お茶にしたり、お餅に入れたりと、馴染みのある植物です。
よもぎは、ヨーロッパでは「ハーブの女王」と呼ばれるほど、効果の高い薬草です。
また、シネオールという成分の精油が含まれています。ユーカリやローズマリーなどにも含まれている成分で、燃やすことで、アロマ効果が表れ、リラックス効果が期待できます。
■お灸の冷え症改善効果
・血流改善で、「冷え症」体質を改善する
冷え症の改善には、血流が悪くなった原因を改善させることが必要です。
お灸には、体の表面だけではなく、体の中を温め、体質まで改善する働きがあります。
お灸は、もぐさによる温熱刺激によって、血液中の赤血球を増やす造血作用があるほか、血液やリンパの流れを改善することで、血行が良くなり、冷え症の改善につながるのです。
お灸を使った治療法(東洋医学)では、「気」「血」「水」のバランスの崩れが、血流を悪くして、冷え症を招くとしています。
体のツボにお灸をすることで、「気・血・水」のバランスが取れて、血流が改善して、体の中からじんわりと温かくなります。
体のツボを温めることにより、白血球が増加し、免疫力を高める働きがあります。
リンパ節や細胞の働きも活性化されて、自然治癒力が高まり、風邪も引きにくくなります。
・「気」の流れを整えて、様々な不調を改善する
血行とともに「気」の流れを整えることにより、自然治癒力を高め、様々な体の不調を整える効果があります。
「気」は目には見えませんが、流れが滞ると病気になりやすくなると考えられています。
体のツボにお灸をすることで、「気」の通り道である経絡(けいらく)の流れが良くなり、自律神経のバランスを整えることで、様々な健康効果が得られます。
■お灸にもいろいろなやり方がある~お灸の種類
もぐさに火を点けるのが、いわゆるお灸のイメージだと思いますが、お灸のやり方には、もぐさの大きさや置き方によって、いくつか種類があるので、それらを紹介しましょう。
・点灸(てんきゅう)
米粒半分くらいの大きさのもぐさを直接肌の上に乗せて、火を点けます。燃え尽きるまで乗せているので、ちょっと熱いかも知れません。
・知熱灸(ちねつきゅう)
もぐさを小指の先ほどの大きさにして肌の上に乗せて、火を点けますが、熱さを感じたらすぐに取りましょう。
・あぶり灸
火を点けたもぐさをピンセットなどでつまみ、ツボを温めます。直接乗せずに、じっくりと温めていく方法です。
・竹の輪灸
竹の輪っかの中にもぐさを詰めて燃やし、その温めた竹を体に当ててコロコロと転がします。広い面積を温めたい時に向いています。マッサージをしているかのような温かさです。
・棒灸
太いタバコのように、もぐさを和紙で棒状にくるんだものの先端に火を点けて、ツボに近づけて温めます。じっくり温めたいときにおすすめです。
・台座灸
市販のお灸がほとんどこのタイプです。台座の上にもぐさが乗っていて、シールでツボに貼り付けて使います。熱さもソフトなので、お灸初心者におすすめです。
・隔物灸(かくぶつきゅう)
スライスした生姜などの上にもぐさを置いて、火を点ける方法です。直接もぐさが肌に当たらないので、じんわりと温まります。
■自分でもできるお灸のやり方とは?
お灸は、古くから民間療法として普及しているので、鍼灸院などに行かなくても自宅でもできます。
最近は、非常に便利になってきていて、ドラッグストアやインターネットで「お灸」のセット(「せんねん灸」など)が購入できます。
慣れてくれば、自分自身で手軽にお灸ができるでしょう。
●お灸の手順(「せんねん灸」を例にした場合)
①お灸を用意する
紙に巻いたもぐさに台座が付いた「台座灸」なら、もぐさに火を点けて乗せる「直接灸」より熱くならず、やけどする心配もないので、初心者でも安心です。
②お灸のシールを剥がして、ライターで火をつける
③ツボに貼る
至って簡単でしょう。中には火を使わないタイプもあり、それなら煙も気になりません。初めて使う時は、そういったものでもよいでしょう。