タバコは、もはや公害!それでも、あなたは吸い続けますか?

2018年8月に厚生労働省から、タバコの害は社会全体の大損失になるという研究結果が発表されました。

2015年度の医療費や介護、火災などタバコによる損失を合わせると、その額は推計で何と2兆500億円!にも上るというのです。

主な内訳は、タバコが原因と考えられる病気(がん、脳卒中心筋梗塞認知症)にかかる医療費が1兆6,900億円、これらの病気で必要になった介護費2,600億円タバコによる火災などの関連費が1,000億円というものでした。

医療費の中でも、がんの治療費が5,000億円超になっている他、受動喫煙が原因の医療費は3,300億円で、さらに脳血管疾患による医療費も多くなっています。
この莫大な損失額を削減するためにも、やはり禁煙と受動喫煙防止が不可欠です。

ところが、喫煙者の間には、今だに「タバコは個人の趣味嗜好の問題だから、むやみに法律で規制するのはおかしい」とか、「喫煙者の人権を無視してよいのか?」という反論があるようです。

しかし、そうした考え方には根本的な見落としがあります。

なぜなら、タバコの害は、もはや個人だけの問題ではないからです。

すなわち、喫煙者本人だけでなく、周りの人々にも多大な災いと迷惑を及ぼす、もはや社会全体における明らかな「公害」と言って差し支えないでしょう。

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■タバコの3大有害物質とは?

今更でもありませんが、まずは、喫煙による健康被害からおさらいしてみましょう。

タバコの煙には4,000種類の化学物質が含まれ、そのうち200種類以上は有害物質で、70種類以上の発がん性物質が含まれています。

その中でも、特に有名なのが、次の3つです。

<たばこに含まれる3大有害物質>

ニコチン

胃から吸収され、血管を収縮させ、血液の流れを悪くする作用があり、動脈硬化を促進させます。

副腎からのカテコールアミン分泌を促進させ、血管収縮、血圧上昇、脈拍増加をきたし、心臓に大きな負荷をかけるのです。

また、強力な血管収縮物質を持つトロンボキサン A2を遊離させ、血小板凝集や血栓形成のリスクも高まります。

さらに悪質なのが、タバコへの依存性を高める物質だということです。

喫煙により、急激にニコチン血中濃度が上昇することで「依存」が形成され、これは麻薬に匹敵するほどの依存性質です。

喫煙後約5分で血液中のニコチン濃度は最大になり、その後約1~2時間で半分以下に減るため、ニコチン濃度を維持するには断続的にタバコを吸い続けなければなりません。

吸えば吸うほど依存性は強くなり、やがて自分の意思とは関係なく、ニコチン支配による喫煙が繰り返されます。これがいわゆる「ニコチン依存症(中毒)」です。

・タール

タバコのヤニの成分で、気管支や肺などの呼吸器に沈着し、大きなダメージを与えます。

発ガン物質として有名なベンツピレンを始め、アミン類など数十種類の発ガン物質が含まれています。

一酸化炭素

酸素を運ぶ機能を阻害し、酸素不足を引き起こす上に、動脈硬化を促進させます。

一酸化炭素有機物の不完全燃焼で発生するガスで、タバコ煙にも3%前後含まれています。

無味無臭の気体で、極めて毒性が強い物質です。

私達の血液にはヘモグロビンという成分があり、酸素はこのヘモグロビンに結びついて全身に運ばれて行きますが、一酸化炭素は酸素に比べて200倍以上もヘモグロビンと結びつきやすい性質を持っています。

このため、喫煙によって一酸化炭素を体内に吸い込むと、酸素はヘモグロビンに結びつくことができず、血液の酸素運搬能力が低下し酸素不足=酸欠に陥ってしまいます。

■「たばこにもメリットがある?」という、とんでもない誤解とは?

 一方で、喫煙者の間には、「タバコにもメリットがある」という錯覚があるようなので、その中身と真実を検証してみましょう。

「いらいらした気分が落ち着き、リラックスできる?」

タバコには、高ぶり過ぎた神経を落ち着かせたり、リラックスさせる効果があると言われます。

これは、「精神的な疾患を抱える患者は、精神状態が悪くなるとタバコの本数が増える」という医師の分析によるものです。

そうでなくても、「イライラするとタバコを吸いたくなる」「みんなで飲んで騒いていると、ついついタバコに手が伸びる」といった喫煙者の声は、よく聞いたことがあると思います。

イライラする時に、タバコを吸うと気分が落ち着く・・・とじるのは、ごく軽度の一酸化炭素中毒による神経麻痺=鎮静状態の表われなのです。

そして、タバコが切れると、タバコが吸いたくなるのは、ニコチン依存症による典型的な禁断症状です。覚せい剤と同様に恐ろしいのです。

「脳を活性化させて、やる気を起こす?」

ニコチンには、ストレスを和らげる他、やる気を起こさせたりする効果があるとも言われます。

確かに、ニコチンには、脳の「側坐核(そくざかく)」という部分を活性化させる性質があります。

この側坐核は、「脳の意欲」をつかさどる重要な部分で、ニコチンを摂取すれば気分が元気になって、面倒なこともやる気が起こる、という理屈です。

しかし、これは、実は覚せい剤と同様の一時的な興奮状態を示しているに過ぎないのです。

こうした「見かけ上のやる気」は、無論長続きはせず、一過性の興奮状態を繰り返すことで、ますます心身の疲弊が積み重なってしまうのです。

③「ダイエットになる?」

ニコチンは胃腸にダメージを与え、その結果食欲不振を招きます。

なるほど、喫煙を続けていれば、食欲は減退し、食事量は減るので、体重が増えることはないでしょう。

ただし、そのダイエット方法は決して正しい健康的なものではありませんよね!

禁煙した途端に、体重が増えて困った?・・・と嘆く前に、タバコを止めたことで、食欲が戻って、その結果体重が増えるのは、健康な状態に戻った証でもあると素直に喜びましょう。

そして、正しくダイエットしたいなら、まずは適切な食生活と適度な運動など、基本的な生活習慣を見直すことから始めるべきです!

■ご存じですか?日本の喫煙による死者は毎年12~13万人!

 

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以上のように、「喫煙は百害あって一利なし」です。

タバコを吸う人(喫煙者)が「がん」で亡くなる危険性は、男性が喉頭がんで5.5倍、肺がんで4.8倍、女性では肺がんが4.2倍、乳がん1.9倍(閉経前女性に限ると3.9倍)となっており、また男女とも脳卒中心筋梗塞の大きな原因も喫煙です。

喫煙者の死亡率は非喫煙者より高く、国内で喫煙に関連する病気で亡くなった人は年間で12~13万人、世界では年間500万人以上と推定されています。

さらに、国内の調査では、20歳よりも前に喫煙を始めると、男性は8年、女性は10年も短命になることが分かっています。

喫煙は、一時の至福感と引き換えに、自分の寿命を削っているのです。

ただ、救いの道は残されています。

早く禁煙すればするほど、寿命を取り戻せるのです。

例えば、35~40歳で禁煙すれば、喫煙前の余命を取り戻すことができます。

また、50歳で禁煙しても6年、60歳なら3年ほど寿命を延ばすことができると言われています。

いくつになっても、禁煙が遅すぎることはありません。

先送りせず、禁煙する気になった時が「タバコの止め時」だと自覚した方が身のためです。