長寿者に学ぶ健康長寿とは?

■世界一の長寿国になった日本

厚生労働省の発表によると、2020年の日本人の平均寿命は男性81.64歳、女性87.74歳で、共に過去最高を更新しました。

男女合わせた平均寿命は84.3歳となり、世界一の長寿国です。

さらに、100 歳以上の長寿者を百寿者と言いますが、1963 年にはわずか 153 人に過ぎなかったのが、1981 年には1,000 人を超え、1998 年には1 万人を超えました。

その後も毎年増加を続け、2021年9月には実に8万6,510人に上っています。

ちなみに、その内訳は圧倒的に女性が多く、全体の88.4%を占めています。

厚労省は、「医療技術の進歩や健康志向の高まりに伴って、今後も平均寿命は延びる余地がある」とコメントしています。

長寿社会の到来に向けて、今回は、長寿者の方々がどのようなライフスタイルを送っているのかを調査した結果を基に、健康長寿についての秘訣を紹介します。

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■長寿者の健康の秘訣とは?

長寿者の人の心と身体についていろいろ観察した結果、個々の病気の発現は、必ずしも一般的注意を怠ったことによるものとは限らない、ということが言えそうです。

また、 病気の原因と痛みの原因とは、同じであることも分かってきました。

病気と痛みは、いずれも「不安」のような悪い心の状態によって発現すると言ってもよいでしょう。

言い換えれば、「不安」を解消することにより、病気や痛みの予防や治療ができるということになります。

さらに長年、百寿者について、その長寿を達成できた健康法などについて調べた結果、健康長寿の秘訣として、次の 3つが最も重要であることが分かってきました。

1.生きがいを持つ

2.くよくよしない

3.腹八分

この3つのことは、よく耳にすることですが、 一般的な健康法としては、あまり強調されていることではありません。

かつて、大隈重信 (1838~1922)は、「人間は本来、125 歳まで の寿命を有している。適当 なる摂生をもってすれば、 この天寿をまっとうできる」と語り、83歳で天寿を全うしましたが、長らく現役の政界人として活躍し、最後の総理退任時の年齢は満78歳6ヵ月で、これは歴代総理大臣中最高齢の記録でした。

一般的健康法は、主として肉体的健康のためのものです。

一方、長寿者の人達の健康法は、主として精神的に健全な状態を目指したものであると言えます。

長寿者の人は、比較的若い時期に、精神的健康を維持する重要性を痛感し、実践を重ねて体得して、高齢になってからも、常に精神的健康の維持ができるようになった人達なのです。

すなわち、長寿者の方は、ストレス解消の達人が多いと言って良いでしょう。

逆に、ほとんどの人は、精神的健康の維持の重要性について理解不足で、ストレス解消に対する実践が下手で不十分なために、弱いストレスでも各種の病気を招きやすく、結果的に病気になりやすくなってしまうのです。

ということは、心の持ち方、生き方への心構え(Attitudes)が長寿に大きく影響を与えると言えるでしょう。

5つの 100 歳長寿アドバイス

この 50 年間で、日本の百寿者は 約500 倍に増加しています。その百寿者の特徴について調べた研究によると、共通しているのは、大体次のような性質です。

・明るく親しみやすい

・仕事熱心

・几帳面

・外交的

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ある研究者によると、人間の一生には成長、成熟、老化‐死亡の三つの過程があって、老化は喪失の時期と言われており、老化を早める因子として、次の 5 つが挙げられます。

1.仕事を失う(定年退職)

2.家族・近親者、友人を失う

3.社会とのつながりを失う

4.病気になりやすい

5.経済的余裕を失う

従って、老化を防ぐには、病気の予防や事故防止とともに、日頃の心身の活動が大事になるというのです。

すなわち、次の5つです。

1.生きがいを持つ

2.心身に合った生活リズム ~食事、睡眠、便通、昼間の活動

3.家族、世のため、人のために生きる

4.親しい友人を持つ

5.家に閉じこもらない

健康寿命 100 歳を超えよう

2015年に発行された「100 歳まで働く時代 がやってきた」(ぱるす出版)や「百年以上続い ている会社はどこが違うのか?」(致知出版社) の著者・田中真澄氏は、日本映画界の巨匠で 文化勲章受章者の映画監督・脚本家だった新藤兼人氏について、次のように語っています。

 「(新藤)氏は、100 歳の誕生日の 1 ヵ月後に 亡くなりましたが、最後まで現役を貫かれた方でした。90 歳の時、日本経済新聞紙上でこう語 っていました。

『最後まで仕事をして、まだ死ねないと未練たっぷりのうちに死ぬ人は、その瞬間まで生きたということです。

私は、仕事こそが人生だと思います。 この考え方はいくつになっても変わらない。人 は仕事をして生き、仕事をしながら死ぬのだと考えます。

私も、もし撮影中に倒れれば、他の人には迷惑かも知らないが、私の生涯は幸福だったと思うに違いありません』。

この新藤氏の 90 歳の時の言葉を、私も10 年後の自分の90 歳の誕生日に言えるようでありたいと考え、そういう自分になるためには、私自身が死ぬまで働く具体的な目標を抱き、日々真剣に仕事に生きる気概を持ち続ける必要があります。」

まさに、仕事を志事( しごと) にしていたのではないかと思います。

田中氏は、43歳で日本経済新聞社を退職後、「人生100 年」の到来を予測し、それに対応した新しい生き方を情熱的に説く日本初のモチ ベーショナルスピーカー(人々にやる氣を喚起する専門の講演家)として、85歳の現在も、100 歳に向かって働くことの大切さを啓蒙する講演活動を精力的に続けています。

健康づくりは、日々の継続が大事!

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また、福岡県後期高齢者医療広域連合では、高齢者が自立して健康に日常生活を過ごせるように、健康づくりに取り組んでいます。

その一環として、 健康長寿マイスターで 107 歳まで現役で「御長寿」であった曻地( しょうち) 三郎博士が提唱する十大『習慣健康法』を、家庭でも楽しく実践、自己採点で きるダイアリー(日記)形式の冊子を作成してい ます。

曻地氏は、1906 年(明治 39 年)北海道に生 まれ、旧制広島文理大学(現広島大学)卒業後、 九州大学医学部で精神医学を学んだ後、1954 年福岡市に社会福祉法人しいのみ学園を創立 し、障がい児教育に尽くしました。

日本国内はもちろん、世界中で講演活動を 行い、2005 年(99 歳)~2008 年(102 歳)の 4 年間及び2010年(104歳)~2012年(106歳) の 3 年間、通算 7 回の世界一周講演旅行を行 い、2012 年には、公共交通機関を利用して世界一周をした最高齢者として、ギネス世界記録に認定されました。

2013 年に107 歳で天寿を全うされましたが、「わが人生は楽しかりけり・・・ 悔いることなし」という辞世の句を幾度も噛み締 めながら、「108 歳になれば、パスポートが切れる。 今度は地球を飛び出して宇宙に行くよ。パスポ ートがいらないからね!」と笑顔で言い残したとのことです。

「健康づくり」は、毎日継続することが大切です。無理をせず、できることからコツコ ツと、楽しみながら継続することが健康長寿へつながります。

そのため、福岡県後期高齢者医療広域連合では、「健康長寿ダイアリ ー」を使って、日々の健康づくりにチャレンジすることを勧めています。

健康になることは手段であって、健康になって何を成すのか、何を志(こころざ)すかが大切なことを、医者も「生きがい」や「働きがい」を長寿の条件のトップに挙げて、提言しているのです。