温泉の効能発揮には、温泉を飲む=「飲泉」もある!

めっきり冬らしい陽気になってきましたね。寒さが身に染みる季節には、ゆっくり温泉にでも浸かってほっこりしたいものです。

新型コロナ禍も、第6波が来る前に、ひっそりと温泉にでも行って、英気を養いたいですね。

温泉の効用については、すでに広く知られていますが、今回は、温泉の知られざる効用などについて、改めて紹介したいと思います。

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■温泉は、古来より「湯浴(あみ)」から始まった。

そもそも日本での入浴の習慣は「湯浴(ゆあみ)」から始まっています。 

6世紀に伝来した仏教の影響で、寺院などで沐浴(もくよく)が広く行われるようになりました。

体の汚れだけでなく、心の汚れも取り去って清めるという「みそぎ」から発展したのが「湯浴み」だと言われています。

やがて、江戸時代になって「湯治(とうじ)」が一般的に行われるようになります。

すなわち、 農村地帯を中心に、農閑期に皆が温泉地に集まって裸の付き合いをして、明日への活力を充電する、一大レクリエーションの場となったのです。

温泉というのは、本来、病人を治すのではなく、もちろんそういう効用もありますが、どちらかというと、げん氣な人が一層げん氣になる生活の場と言えるでしょう。

温泉には、免疫機能を高め、ストレスを解消し、体内の全てのバランスをうまく調整するという大きな働きがあります。

・日本の温泉は、泉質が豊富で、いろいろな効能を味わえる。

温泉には、いろいろな成分が溶け込んでいて、それぞれに効能があるのです。

日本の温泉は泉質が豊富ですが、大別して酸性の湯は水素イオンに殺菌効果があるので、特に皮膚病に効きます。

一方、アルカリ性の湯は、炭酸イオンが皮膚の脂肪分を分解してツルツルにするので、美肌効果があります。

珪素は、美容のほかに神経痛にも効果があると言われています。

湯に浸かるだけでなく、珪素を含んだ泥(鉱泥)でパックすることも、美容法の一つとして行われています。

炭酸ガスは、血液中に吸収されると血管を拡張する働きがありますので、血行が良く なり、心臓などの循環器系に良い影響を与えます。

また、 化石海水はナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどが豊富に含まれているので、保温効果があります。

さらに、肌の湿り気を保つ保湿効果(モイスチャー効果)があります。

・温泉成分による効果だけではない、温熱効果と遠隔効果。

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もっとも、最近の温泉医学では、成分云々よりも、温熱効果や遠隔効果を重視する傾向にあります。

最も重要なのが温熱効果で、41~42 度の湯に10分間程度浸かると、ストレス解消になります。

これは、温泉でなくても、一般家庭で入浴しても得られますが、できるだけ大きなお風呂に入って、ゆったりくつろぐと、より大きな効果が得られます。

遠隔効果というのは、ふだん生活している土地を離れて、非日常的な体験をするというものです。

それによって、体や心の乱れたものを元に戻す、 いわゆる調整効果が得られるのです

例えば、九州の黒川温泉は多くの人々から愛され、高く評価されています。

その魅力は、もちろん弱酸性の温泉成分も良いのですが、むしろ環境にあると言われています。

雄大阿蘇の風景の中を通って箱庭のような町に入ってきた時の変化が、どれだけ人にインパクトを与えるか、また、憩いを感じさせる佇まい、自然の風景と町並みが一体となった温泉地全体の環境が素晴らしいのです。

■温泉の持つ総合力で、飲泉効果を最大限に高める

朝倉一善さんという作家は「“奇跡”の温泉―医者も驚く飲泉力」(2007年、朝日文庫)という著書の中で、次のように述べています。

「私たちの体の中で作られ、私たちが生きていくためのすべての化学反応を行っているのが数千種類もの酵素であるが、この酵素バクテリアのようにミネラルを取り込んで、水のあるところでしか活性化しない。

(中略)体にいい水の条件のひとつはミネラルに富んだ水であること。ヒ素・水銀・鉛・カドミウムといった、量が多すぎると有害な重金属の問題もなく、 農薬などの有害な化学物質が混入している心配もない、水道水のように残留塩素(遊離塩素)もな い飲用できる温泉源泉水は、ミネラルバランスにすぐれた水の典型といっていい。」

また、温泉療法専門医も「温泉から分析表どおりの効果を得ようとするなら、飲泉しかないですよ、入るよりもです。飲泉がいちばん確かですね」と語っています。

日本では、ヨーロッパほど飲泉の習慣は盛んではありません。

自然環境や土壌の違いもありますが、ヨーロッパの温泉は成分が多く含まれていて、濃いので、飲みにくい反面、薬効が大きいのです。

便秘解消や肥満症、慢性消化器病などの治療に効果があるようです。

温泉を飲む習慣は古く、ギリシア・ローマ時代からあったと言われています。

・日本の温泉は飲みやすいが、効果も穏やか。

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一方、日本の温泉は、全般的に含有成分が少なく、薄いので、 口当たりがよく飲みやすいのですが、飲むだけで病気が治るほどの効果を望むには、少し無理があると言われています。

昔、薬がない時代には、代替療法として飲泉が取り入れられたことがありましたが、現在は、飲泉だけを療養に用いているところはほとんどありません。

病気に効くところまでは発展していないので、飲泉だけで治るとは言い切れないのです。

体を治すには、まず近代医学(西洋・漢方)、それでうまくいかない場合に、いろいろ補完的な意味で、いわゆる代替療法と言っていますが、その一つとして飲泉が考えられているわけで、この点を錯覚しないようにすることが重要です。

飲泉の効用については、いろいろな見解が出されていますが、まだ研究途上で、果たして飲泉だけでどこまで効くかということについて、はっきりと結論づけるのは早計のようです。

ある程度の効果はあるでしょうが、より高い効果を出すためには、入浴と一緒に行うことが必要です。

なぜなら、温泉の効用というのは、本質的には飲むだけでなく、入浴して、楽しく語り合いコミュニ ケーションを取りながら、食事をしたり、レクリエーションをするといった生活の中の一部として 存在するからです。

一般に、温泉水に含まれている塩分が、炭酸ガスなどいろいろなガスを吸着する性質があると言われています。

現在、日本には約 3 万の源泉、約 3 千の温泉地があると言われていますが、その中で飲泉が認められている源泉は、わずか100~200 に過ぎません。

伝統的に飲泉の習慣が根付いている所ならば良いのですが、新たな所は許可されにくい傾向にあります。

飲泉については、例えば砒素の摂取は 0.1mg/日以下というように、同様に銅、鉛、亜鉛、フッ素、硫化水素などについても国の基準が定められている上、また、きちんとした飲泉施設を作らなければなりません。

現在では、温泉水は温泉場に泊まって、そこで飲むのが望ましいですね。

前に述べた遠隔効果のとおり、 そこへ訪れる行為も非常に重要だからです。

森林の中でハイキングをしたり、魚釣りをしたり、食事や名所旧跡めぐり、等々いろいろ総合的に行って、その人を今までとは違った方向へ持っていくのを「温泉地療養」と言います。

その中で、飲泉もその一部として位置付けることで、飲泉自体の 効果を最大限に発揮できるわけです。

湯治を行っている温泉旅館には、入浴や飲泉だけでなく、温泉水を食事に利用するところもあります。

温泉水でご飯を炊いたり、おかゆを作ったり、味噌汁を作ったり、野菜を煮たり、豆腐を作ったり、玉子をゆでたり、そのように温泉を生活の中に取り入れている所が何ヵ所かあります。

長野県の小谷温泉、野沢温泉和歌山県湯の峰温泉兵庫県日本海側に位置する湯村温泉などです。

・多種多様な温泉の恵みを総合的な方法で享受しよう!

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温泉の効用を十分に享受しようと思ったら、温泉の持つ総合力を重視しなければならないのです。

例えば、アルカリイオン水だけを飲んで健康になるということは、本来あり得ません。

それだけを取り入れるのではなく、生活の中で、きちんと他の物も取り入れて、初めて効果が現れるものなのです。

そもそも、一つの物だけで、それだけやっていれば良いという医学的なものは世の中にはありません。

人間は、いろいろなことをやって生きてきました。いろいろなものを食べ、いろいろなことができるので、生活範囲も広く、そのお陰で動物の中で一番栄えてきたのです。

まさに、多種多様な生活をしてきたわけですね。

日本の温泉も多種多様です。泉質、成分、温度、旅館、等々いろいろなものがあるから、面白いのです。

しかも、いろいろなものがあって、一つの形を成しているのです。

温泉はナチ ュラルなものですから、人と温泉との関わりには、どうしても“曖昧な部分”が出てきます。

自然療法は、その曖昧さを尊重します。

お互い裸になって野天風呂に入ってコミュニケーションする、また生命力を持った同じ温泉水を飲むことで、「生きる力」が蘇るのです。

ここでいう“曖昧さ“とは、どっちつかずという意味ではなく、一歩高い所に立って物事を見ることです。

ガチガチに型にはまった堅苦しさではなく、良い意味での「ルーズさ」、気持ちの余裕みたいなものです。

新型コロナ禍で、冷え切った私たちの心身や経済を勇気づけるためにも、天然温泉に入って、温泉水を飲むのも大いに有効だと思います。