冷え症というと、当然体温も低いと思いがちですが、実際はどうなのでしょうか?
世の中には、体温低いけれど冷え症ではない人もいれば、逆に、体温高いのに冷え症の人もいます。
そこで、今回は、冷え症と「体温高い、低い」との関係について、お伝えします。
■冷え症と「体温低い」のは、イコールではない!?
冷え症とは、一般に「普通の人が寒さを感じないくらいの温度でも、全身や手足、下半身など体の一部や全身が冷えて、辛い症状」と言われています。
そして、冷え症の人は皆、体温が低いと思われがちですが、必ずしもそうとばかりは言い切れません。
一般に、体温が36度未満の人を「低体温」と呼ぶことがありますが、冷え症の定義に「体温が何度以下」、ということはないのです。
冷え症の自覚症状があっても、体温(平熱)が36度以上ある場合もあれば、 体温が低い「低体温」だからといって、必ずしも冷え症だと言うわけでもありません。
・「冷え症」と「体温低い」のは、どう違うの?
では、「冷え症」と「体温低い」のは、どう違うのでしょうか。
冷え症は、実際の暑さ寒さに関わらず、異常に冷えを感じてしまう状態のことと言えます。
冬でも夏でも手や足先が冷える、ひどくなると、痛みや、のぼせ、下痢などを伴って、日常生活に苦痛と感じるような不快な症状が表れます。
冷え症の人が感じる、手足などの末端の冷えは、様々な原因から手足の血管が収縮したりすることで、血流が悪くなることが一因となって起こります。
そのため、体の表面の温度は低くなります。
しかし、その場合でも、体温を測ってみると、36度以上あって正常なことがあります。(もちろん、体温が低いこともありますが)。
というのは、体温は、「深部体温(内臓の温度)」と言って、体の中心の温度を測っているからです。
「体温低い」というのは、体の中枢の深部体温の温度が低いことを言います。
医学的な「体温低い」の定義は、本来37度くらいである体の中の深部体温が、35度以下になってしまうことです。
ちなみに、私たちがいつも測定している「体温」は腋の下、耳などですが、これは「深部体温=内臓の温度」が体の表面(皮膚)に伝わっている温度を測っているので、若干低くなっています。
冷え症は、体の表面が冷たくなるという症状により自覚できる場合が多いのですが、体温が低いのは体の内部の状態なので、自覚症状がないことも大きな違いと言えるでしょう。
■冷え症と言える体の表面温度は何度から?
冷え症の場合、体の表面の温度は、何度くらいなのでしょうか?
前述したように、「何度以下が冷え症・・・」という定義は特にありません。
また、指先や足先などの末端は特に個人差が激しいのですが、目安となる温度はあります。
体の表面でも、温度が比較的安定していると言われるのがお腹の表面です。
お腹の表面温度は、腋の下より2度低いくらい、平均で34~35度くらいになります。
これが32~33度になると、冷え症を疑った方が良いでしょう。
同様に、足先の表面温度が常に30度を下回るくらいなら、「冷えている」と言えます。
もちろん、外気の温度にも影響を受けますから、室温がもっと低ければさらに下がることになります。
とは言え、表面温度計は、一般家庭にはあまり常備されていないと思われるので、普通の体温計で測った腋の下の体温が35度台ならば、足元の表面体温は30度を下回っていると考えて良いでしょう。
■冷え症の原因は?
冷え症が起きるのは、いくつか原因がありますが、第一はストレスなどの影響で、自律神経が失調して、体温調節の機能が正常に働かなくなった場合です。
人の体は、体表面の温度が一時的に下がっても、自然に元に戻るようなしくみになっています。
例えば、気温が急激に下がった場合、体の表面から熱が逃げないように 「皮膚の毛細血管を収縮する」指令が脳から出て、血液循環量を抑制します。
すると、一時的に体の表面は冷たくなりますが、ほぼ同時に「熱エネルギーを増産する」指令が脳から内臓に出て、体が温まります。
この体温調節作用が上手くいかない時、冷えを感じるのです。
第二は、血液循環が悪い場合です。貧血や低血圧、手足の動脈硬化、内臓の機能低下などによる血液・血管系の不調が原因で、血行不良になって、冷えを感じる場合です。
また、筋肉量が少なくて上手く熱が産生できない場合も、冷え症の原因になります。
・特に、手足が冷えるのはなぜ?
温かい血液の出発点は心臓で、血圧は心臓から離れるに従って低くなります。
心臓から最も遠い手足は血圧が低く、温かい血液が流れにくいために冷えやすいのです。
特に、体温が下がって血液の流れが悪くなると、体はより大切な内臓や脳に優先して血液を循環させ、手足は後回しになるので冷えてしまうのです。
もちろん、体温が低いことが原因で冷え症になることもあります。
■体温が低い原因は?
体温が低い、低体温の目安は、体温が35度台です。
人の体は、周囲の環境などで急激に体温が下がると、震えが来たり筋肉が硬直しますが、これは熱を作り出そうとする働きで、こうなることで体温を通常の状態に戻して、一定に保つようにしようとするのです。
ところが、この体温調節が上手く行われない場合や、あまりにも急でこのような動作で熱を作るのが間に合わないと、体温が低いままの低体温状態になってしまいます。
最近、このような一時的な体温の低下ではなく、従来に比べて恒常的に体温(平熱)が低下していることが問題視されてきています。
この恒常的な体温低下の傾向は、持って生まれた体質的な場合や、甲状腺機能低下症といった病気でも起こりますが、何より運動不足、不規則で栄養の偏った食生活、ストレスといった日常的な生活習慣の変化による影響が大きいと考えられます。
そして、女性だけではなく、近年では、男性や子どもにも低体温化が進んでいると言われています。
■体温低いことが冷え症の原因に!?
内臓が活発に働くために必要な温度は37.2度と言われています。
腋の下の体温が36.5度前後なら、体内温度は37..2度程度あるということになり、生命力が最も活発になる体温で、細胞の新陳代謝も活発に行われます。
逆に体内温度が37.2度に満たないと、免疫力の低下、自律神経の失調、ホルモンのアンバランスなどを引き起こす原因になり、体の様々な不調となって表れます。
例えば、体温が1度下がると、免疫力が30%も低下し、代謝は12%低下すると言われています。
体温が正常ならば、免疫システムも正常に働き、健康が保たれることになるのですが、体温が低いために免疫システムが正常でないと、体内に入り込んだウイルスや細菌に負けてしまい、様々な病気にかかりやすくなってしまいます。
また、免疫システムのバランスが悪いと、本来ならば攻撃する必要のないものにも反応してしまって、アレルギー症状を引き起こしてしまうこともあります。
・冷え症には、やはり体温が低い人が多い?
体温が低い人は基礎代謝や免疫力が低く、そこに睡眠不足や栄養不足など体を冷やす要素が加わると、体温はさらに低下して、冷えやむくみ、疲れやすいなどの症状が表れること多くなります。
また、体温が低い人は、血圧も低い低血圧の場合が多いようです。
体温の調整も血圧の調整も、自律神経の働きが大きく影響します。
この自律神経が上手く機能しないと、低血圧になり、体温も低くなってしまうのです。
そして、低血圧は、貧血とも密接な関係があると同時に、冷え症とも関連があります。
■低血圧が冷え症を招く
血圧とは、血液が流れる時に血管を内側から押す圧力のことを言いますが、血管が拡がったり血の巡りが悪くなることで、血管を押す圧力が下がってしまう状態が低血圧です。
低血圧の一般的症状として、めまいやふらつき、耳鳴り、食欲不振、倦怠感、そして、手足の冷えやむくみなどが挙げられます。
・冷え症と低血圧は大きな関係がある
冷え症の原因は、血液の循環が悪いことから生じますが、血液は体温調節のための熱を運ぶ役目を持っています。
足の筋肉が弱い場合や、毛細血管の働きが悪いと、血液が足先で滞ってしまい、そのため冷え症が起こります。
血圧は心臓から離れるに従って、また動脈、毛細血管、静脈の順に低くなっていきます。
従って、心臓から一番遠いところにある足先の静脈の血圧は、体の中で一番低くなっています。
また、体温も心臓から離れるに従って低くなるのが普通です。
血圧が低ければ低いほど、温かい動脈血が末梢血管へ流れにくくなり、さらに冷たい静脈血も末梢血管から心臓へ戻りにくくなって、静脈血のうっ血が起こり、冷えを生じ易くなって、冷え症の原因になります。
つまり、低血圧の人は、冷え症になりやすいと言えます。
低血圧とは、心臓が血液を送り出す力が弱いことを言いますが、冷え症で悩む場合も同時に低血圧に陥っている場合が多いのです。
■冷え症なのに体温高いのは、なぜ?
一方、「手先や足先が冷たいのに、なぜか体温は高い…」という人がいます。
普通は、冷え症の人は「体温が低い」と思いがちですが、例外もあります。
冷え症なのに、体温は高いということも、もちろんあり得るのです。
言い換えれば、体温高いのに、なぜ冷え症になるのでしょうか?
いくつか理由が考えられます。
・体温高いのに冷え症の理由①~血行が悪い
体の中で熱はきちんと作られているから体温は高いのに、その熱を運ぶことができていないので、冷え症になる場合です。
私たちの体は、内臓などで熱が作られ、その熱が血液によって全身にくまなく運ばれるので、体の隅々まで温まります。
しかし、血液の流れが悪くなると、熱を運ぶことができません。
それで、手先や足先が冷たくなる冷え症になるのです。
この場合、特に、手足など体の末端に血液を循環させる末梢血液循環機能が低下している可能性があります。
そのため、末端冷え症になってしまうのです。
末梢血液循環機能の低下は、老化やストレスなどによる自律神経のアンバランスによっても引き起こされます。
・体温高いのに冷え症の理由②~寒さを感じやすい
体温(平熱)が高いと、寒さを感じやすいとも言われています。
人の体は中心に近づくほど体温が高く、その分、手や足の先は冷たくなりがちです。
体温(平熱)が高めの人は、体の中心と末端部分の温度の差が激しくなりやすいので、冬だけでなく、室内外のちょっとした気温の変化にも敏感になりがちです。
そして、体温と外気温に大きな差を感じるために、体温が低い人よりも寒さを感じやすくなって、どちらかというと寒がりな傾向にあります。
個人差がありますが、寒がりの程度が高じて、冷え症のような症状を自覚する場合もあると考えられるのです。
いかがですか。
冷え症は、体温が低い人がなりがちですが、例外として、体温が高い人もなり得るということですね。
そして、冷え症を改善するのも、体温が低いのを改善するのも、基本的には、同様の対策を取れば良いということが分るでしょう。
すなわち、日常的な生活習慣の見直しが重要だということですね。