冷え症を予防・改善するには、体を内側から温め、血行を良くし、自律神経をきちんと機能させることが大切です。
そのためには、基本的な生活習慣を見直す、例えば栄養のバランスのとれた規則正しい食生活を続けること、その際、特にビタミンE・B群・Cや良質のタンパク質などを積極的に摂ることが効果的と言われています。
そこで、今回は、冷え症に効くビタミンEの働きと効果などについて、お伝えします。
■冷え症に効くビタミンEの働きとは?
ビタミンEは、化学名を「トコフェロール」と言います。
トコフェロールは、「子どもを生ませる」という意味で、ビタミンEはもともと動物研究で不妊を解消する栄養素として、1920年代に発見された脂溶性ビタミンです。
ビタミンEは副腎や卵巣に蓄えられ、女性ホルモンの分泌を調整して生殖機能を維持する働きがあります。
そして、医薬品として月経前症候群や生理痛、生理不順などを改善する効果が認められているほか、更年期の諸症状に対しても、緩和する効果が期待されています。
・ビタミンEの働き①~抗酸化作用
ビタミンEは、体内で様々な働きを担っていますが、中でも、代表的な働きと言えるのが抗酸化作用です。
体内に取り込んだ酸素の数%は活性酸素に変化しますが、体内で活性酸素が過剰に発生すると、体の細胞を傷つけ、動脈硬化を引き起こしたり、体内の脂質を酸化させてしまいます。
私たちの体は、大気汚染、紫外線、ストレス、喫煙などから毎日多くの活性酸素が生み出され、酸化した体は古い機械のように錆び付いていきます。
つまり、体が錆びる=老化につながるわけです。
老化はすなわち酸化であると言われ、シミやしわ、たるみといった肌のトラブルも活性酸素によるものとされています。
また、体の老化を促進させるだけでなく、がんや動脈硬化など生活習慣病の引き金になるとも言われています。
ここで、ビタミンEの強力な抗酸化作用が、大きなパワーを発揮し、体のあちこちが錆びてしまうのを防ぐ働きをするのです。
ビタミンEは、それ自体が活性酸素と結びつきやすい性質を持っているため、活性酸素とすばやく結合することで活性酸素を除去し、細胞が酸化されるのを防ぎます。
この作用から、ビタミンEは老化のスピードを遅らせる「若返りのビタミン」とも呼ばれています。
体内の細胞膜にも存在していて、肌や血管を始め、脳下垂体や副腎などホルモン分泌器官も活性酸素から防いでいるのです。
そして、ホルモンの生成・分泌を司る脳下垂体に働きかけることで、自律神経の乱れを防いだり、ホルモンバランスを調整する手助けもしてくれます。
また、体中の細胞膜を守るなどの働きもあり、ビタミンCやビタミンAととても相性が良いことでも知られています。
さらに、抗ストレスホルモンであるコルチゾールの生成に関わることで、ストレス耐性向上効果なども期待されています。
・ビタミンEの働き②~赤血球を若々しく保つ
血行を良くするためには、柔らかでみずみずしい赤血球が欠かせません。
硬く、老化した赤血球は壊れやすく、酸素を各細胞に届けることができないからです。
ビタミンEには、赤血球を若々しく保ち、柔軟性を持たせる働きがあります。
そのため、赤血球が柔軟に変形するのを助け、細い血管の中を通りやすくして、血液の流れを良くします。
また、LDL(悪玉)コレステロールの酸化を防止し、血管自体の柔軟さを保つことにつながるので、血液が滞りなくスムーズに循環しやすくなります
従って、ビタミンEを積極的に摂取すると、血行促進が期待できるのです。
・ビタミンEの働き③~毛細血管を拡げ、血液をサラサラにする
ビタミンEは、血管の収縮を促す神経伝達物質の生成を抑制する働き=毛細血管を拡張させて、血流を促進する働きがあります。
その働きは、血管拡張剤として利用されているほど、血流改善の心強い味方と言えます。
抗酸化作用によって、過酸化脂質の生成量が抑制・分解が促進されることで、血液の粘つきを軽減する働きがあります。
また、血小板が血管の壁に張り付いたり凝集したりするのを抑え、血管内で血が固まってしまうのを防ぐ働き(抗血栓効果)があるので、サラサラになった血液が末梢にも流れるようになります。
さらに、ホルモン分泌を調節する働きもあるため、自律神経の乱れを改善するにも効果的で、筋肉で作られた熱が手足の先まで送り届けられるようになります。
■ビタミンEと合わせて摂りたい栄養素とは?
・ビタミンC
ビタミンCも抗酸化ビタミンの一つですが、こちらは水溶性ビタミンで体液中に存在しています。
ビタミンEとは働く場所が異なるため、合わせて摂取することで多方面からの抗酸化作用が期待できます。
また、ビタミンEは活性酸素を無害化すると抗酸化力を失ってしまいますが、ビタミンCはその無力化したビタミンEを活性化させる働きがあります。
ビタミンCによって、再びビタミンEは活性酸素を除去できる状態になるので、ビタミンE単独よりもビタミンCと一緒に摂取する方が抗酸化の効率が高まると言えるのです。
・ビタミンA(β-カロテン)
ビタミンAは、ビタミンEと同様に脂溶性ビタミンとして細胞膜中に存在しています。
ビタミンAには、ビタミンCとビタミンEの働く時間を長くする働きがあるうえ、ビタミンEにはビタミンAの酸化を防ぐ働きがあります。
ビタミンE、ビタミンC、ビタミンAは互いに助け合い、抗酸化作用を高め合う存在としてビタミンACE(エース)と呼ばれていて、冷え症の改善だけでなく、アンチエイジングや美肌作りにも高い効果が期待されています。
・脂質
ビタミンEは、脂溶性ビタミンのため、油もしくは脂質を多く含む食材と合わせて摂取することで、吸収率が高まります。
■ビタミンEが豊富に含まれている食材とは?
ビタミンEを多く含む食材には、次のようなものがあります。
【野菜類・果物類】
かぼちゃ、大根の葉、モロヘイヤ、赤ピーマン、バジル、あしたば、ほうれん草、春菊、ニラ、クレソン、ブロッコリー、アスパラ、アボカドなど
【魚介類】
サーモン、ツナ(オイル漬け)、あゆ、いくら、たらこ、うなぎ、かじき、銀ダラ、あなごなど
【種実類】
アーモンド、くるみ、落花生、松の実、ぎんなん、ごまなど
【油脂類】
とうもろこし油、菜種油、亜麻油など
ビタミンEが多く含まれる食材を調べてみると、アーモンドが100gあたり29.4mgと大変多く、次いで松の実、落花生などのナッツ類、あんきも、すじこ、あゆ、うなぎ、たらこなどの魚介類、その他には卵、海苔、モロヘイヤ、アボガド、大根の葉っぱ、かぼちゃ、赤ピーマンなどが挙げられます。
・ビタミンEを豊富に含む食材の代表格ともいえるのがアーモンド
ビタミンEを豊富に含む食品の中でもトップクラスなのが、アーモンドです。
アーモンドには様々な栄養素がバランス良く含まれていますが、なんと言ってもビタミンEの含有量が他の食品に比べても豊富で、約10粒(10g)で、1日の推定摂取量の約半分のビタミンEが摂取できます。
しかも、粉砕して液体のアーモンドミルクにすると、体への吸収率はさらにアップします。
そのため、毎日の料理に使う油を、アーモンドオイルに変えてみるのも上手な活用法です。
そこで、牛乳の代わりにアーモンドミルク、オリーブオイルの代わりにアーモンドオイルなどを代用すると、ビタミンEたっぷりのメニューに早変わりします。
・その他の食材
かぼちゃのビタミンE含有量は、野菜の中でもトップクラスです。
また、アボカドも100g中に3.3mgとビタミンEが豊富な食材で、脂質が多めに含まれているので吸収率も良いのです。
赤ピーマン(パプリカ)もビタミンE含有量が豊富で、食卓に取り入れやすいのでおすすめです。
野菜類を使う場合は、油で炒めたり、少量の油を含むドレッシングをかけて食べると良いでしょう。
その他、小麦胚芽、玄米などもビタミンEを豊富に含んでいます。主食を白米から麦飯や玄米ご飯にするだけでも、効果的です。
これらの食材をうまく利用しながら、ビタミンCやビタミンAなどと上手に組み合わせたレシピをいくつか用意して、少しずつ毎日のメニューに工夫をして、効率よくビタミンEを摂取していきましょう。
■ビタミンEを効果的に摂取するためのポイントは?
ポイント1~油脂と一緒に摂取する
ビタミンEは、油脂に溶ける性質を持つ脂溶性ビタミンの一種で、油脂と一緒に摂取すると吸収率が高まるので、炒めたり、揚げたりして摂取するようにしましょう。
ポイント2~調理油をビタミンEたっぷりのものにする
ビタミンEは、ナッツ類や種子類にも多く含まれています。
調理油をアーモンドオイルやひまわり油、綿実油にするだけでも、冷え症改善効果が期待できます。
ただ、植物油は開封してから徐々に酸化していくので、揚げ物に使った場合は特に酸化物質が含まれているので、使用後は炒めものにまわすなどして早めに使い切るようにしましょう。
古い油は、冷え症改善どころか、過酸化脂質がたっぷりなので、サラサラ血流の妨げとなてしまいます。
ポイント3~サプリメントで摂取する場合は、表示成分と摂り過ぎに注意する
ビタミンEは、体内で貯蔵することができるため、通常の食生活で欠乏することは少ないと言えますが、くれぐれも3度の食事においてバランスよく摂り入れることを心がけましょう。
ストレスが多い方や加齢が気になる方は、ビタミンEを意識的に摂取した方が良いでしょう。
1日推奨摂取量は、成人男性:6.5mg、成人女性:6.0mgと言われていて、一般的な食材・食事から過剰症状を起こす心配はほとんどないでしょう。
ただ、ビタミン剤やサプリメントなどで大量に摂取した場合は、血液が固まりにくくなったり、骨粗鬆症リスクが増加するという報告があるので、注意が必要です。
ビタミンEにはトコフェロールとトコトリエノールがあり、それぞれにα(アルファ)体、β(ベータ)体、γ(ガンマ)体、δ(デルタ)体が存在します。
最も血流改善作用が高いのは、αトコフェロールで、ビタミン剤などを選ぶ場合は、αトコフェロールが含まれているものを選ぶようにしましょう。
また、サプリメントや食品添加物として使われているビタミンEは、天然型(d-から始まるもの)と合成型(dl-から始まるもの)があります。
合成型は抗酸化作用が期待できないと言われているので、サプリメントを選ぶ場合は天然型を選ぶようにした方が無難でしょう。